かわのこラフティング 福田博之さん
―この川の魅力をおしえてください
福田 空知川の上流部にあたる「シーソラプチ川」は人工物が一切目に入らない自然の川。ゴール手前で空知川に名前が変わり、そこはかつて国体のコースにもなった変化に富んだ魅力のある川です。
当社のラフティングは、春はゴールデンウィークからシーズンが始まるのですが、この時期は雪解けの水が供給されるので水量も一番のピークになります。3週間くらいかけて水量も落ち着いてきて、水量安定期に入ります。そして夏休みになると雨の日も増えてきます。
大雨が降るとハイウォーターといって水量が多くなり波も大きくなって楽しみも増えるのですが、その分リスクも増えます。あまり多いと子どもとかが参加できなくなったりしますし泳いだり、飛び込んだりもできなくなります。逆に水量が少ないと、水がすごく清んできれいになります。
―どのくらいの川を下っているのですか?
福田 たぶん北海道の川は100カ所に迫るくらい下っています。ほとんどカヤックやカヌーを使って。個人的には十勝にある歴舟川が好きですね。いい川です。でも、夏は水量が減るので営業としてツアーで下るのはちょっと難しい部分があります。その点、シーソラプチ川は夏でも水量が安定していて営業ができます。プライベートでも下るくらい大好きです。
―どういった部分が魅力?
福田 「自然の力を利用して移動していく」というところが好きです。わたしはスキーも好きで、スキーも一緒。自然の地形などを利用して動いていく。川下りも水をつかって自然の重力で下りていく。このことが、楽しい(笑)。
ロッククライミングや登山も楽しみますが、どっちかというと、川下りとスキーのほうが好きです。海でシーカヤックもやるのですが、やっぱり川が好きですね。屋号にあるように「川の子」なのです。アウトドアは全般的にやります。やらないのは空だけですかね(笑)。
―アウトドアに魅了されたきっかけは?
福田 わたしは1972年、東京生まれの東京育ちです。学校を卒業して1年間だけ、サラリーマンをしました。建築関係でした。23歳の時に仕事を辞めて、1人でカナダのユーコン川をカヌーで下りました。3ヶ月間、2,000キロに達しました。友人から借りたカヌーイストで作家の野田知佑さんの本を読んだことがきっかけで行きたくなりました。
そこでファルトボートという組み立て式のカヌーを買って、東北エリアの川を何本か下って練習しました。テントに泊まるキャンプは好きでやっていたから慣れてはいました。ユーコン川のグレードはさほど難しくないんです。たいした瀬もありません。しかし、1週間くらい町がないウィルダネスを下らないといけないのでその分の食料を持って移動する野営的な能力とかが必要になりました。この旅を契機に、もっと深くアウトドアの世界を知りたいなあと思って、北海道に来たのです。
―その後の行動は?
福田 ユーコン川の旅が終わったら就職しようかなと思っていましたが、社会復帰せずにちょうど、北海道のトマムでスキー場のアルバイトの求人があったのです。スキーはもともと好きでした。ちょうどバックカントリーを始めていたころ。冬はスキーの仕事、夏もアウトドアでの仕事をして生計を立てたいなあと思ってのことでした。1998年、25歳の時でした。
―ラフティングを知ったのは?
福田 冬、トマムで働いていたとき、上司に夏の仕事としてラフティングというものがあるよとおしえてもらったのです。そこで近くの「北海道アドベンチャーツアーズ(hat)」さんにお世話になることにしました。10年くらい社員としてラフティングガイドをしました。
―そして独立ですか?
福田 2011年に仲間2人で独立、開業しました。自分たちの思い描いたスタイルを出してやってみたかったからです。それは小規模、少人数ツアーです。当時は10艇ぐらい一度に出るツアーが多かったのです。多艇数では、わーっと出ていくようなツアーになり、どうしても参加者との接点が少なくなるのです。人数が少ないほうが、川に飛び込んだり、浮かんでみたり、流されてみたりできます。ラフティングだけではない、キャニオニングの要素を加えた濃いツアーができるのです。僕らはそういった方向を志向していました。
―順調に来たところに想定外の災害が・・・
福田 台風10号による甚大な被害は2016年8月のことでした。町内の観測所では観測史上最大の記録的豪雨となり、堤防が決壊。国の激甚災害・局地激甚災害に指定されるほどでした。うちも大変でしたが、今振り返れば、いい面もあったと思っています。まず、断捨離ができた(笑)。強制断捨離です。人のあたたかさも感じることができました。行政の支援があったりとか。今いるスタッフもその時のボランティアで来てくれた人なのです。いろんな人に支えられて、リカバリーできてきました。
川は、ラフティングコース部分はほとんど変化はありません。その下流、落合から下の方は護岸工事が入って変わってしまった場所もありますが。魚の調査をしている人から聞いた話ですが、魚の生息環境としては逆に良くなったそうです。山から砂利が供給されたからだと。増水で樹木が流された場所には若木が生えてきて環境的には自然になじんできました。自然の回復は早いですね。
―今後の抱負をおしえてください
福田 今、新しいアクティビティを開発中です。まだ、いろいろやるべきことがあり、準備中なのですが。近くの川でアドベンチャー系の川下りです。それもあって、新しいスタッフ2人を育てているところでもあります。若い人をリバーガイドとして受け入れて育てていきたい。
加えて、ここのベースでお客様がキャンプもできるようにしたいなと思って準備しています。来シーズンからですね。プライベートでキャンプができる小キャンプ場。川のせせらぎを聞きながら寝られます。ぜひ、南富良野に遊びに来てください。
本文敬称略