白老町のポロト湖畔にアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」のオープンが1年後と迫りました。
一足先に、アイヌ文化を体感できる新しいプログラムがスタート。ポロトの森を舞台にアイヌの知恵と文化を感じて、食文化も楽しめるツアーがあります。
集合は「白老ふるさと2000年ポロトの森キャンプ場」。ビジターセンター裏に新設されたトレーラーハウスが受付です。車で移動してツアーがスタート。
コースはポロト湖に沿う遊歩道、約2キロをゆっくり歩きます。森林浴を感じながら道を進むとキハダの木がありました。
キハダはアイヌ語で「シケレペニ」と呼ばれ、アイヌの中では、黒い果実に苦味があることから煎じて胃の薬として服用されてきたこと。内皮をやけどなどの病気に使ってきたことなどを教わります。
ハリギリの木は「他の木に比べて成長が早く、丸木船や臼、杵、鉢といった大型の生活用具をつくる材料になります」とガイドの説明。
ミズバショウが生える場所には湧き水があり、ここにエゾシカやタヌキ・キツネといった動物たちが集まるという野生を感じます。
トドマツの樹液をさわってみたり、野草を摘んでみたり。季節ごとにあまり知られていない自然の恵みを教わり体感します。
ツアーは出発地点にもどって一休み。イタヤカエデの樹液を使ったオハウという温かい汁物を味わいます。
わたしたちが普段見逃している食材を、アイヌの人たちが伝統的に使ってきた知恵を実際に味見ができます。
ガイドは白老町の地域おこし協力隊、手塚日南人(てづか・ひなと)さん。横浜市出身。高校1年生の時、早稲田塾とFASIDが共催の国際開発プログラムに参加した時から自然やエコツーリズム、先住民族などについて関心を持っていました。当時はSDGsを達成するための政治的運動にも参加していました。
早稲田大学国際教養学部に入学。学生時代にはスペインに留学。留学中、800年に渡るイスラム教徒の支配を経て多民族の文化が融合していく中で表出された芸術や文学を学んでいました。
それとは別で知人を通じて自然農についてや、スペインにおける有機栽培の普及、ビーガニズム、Podemosという第3政治勢力の動き、セクシャルマイノリティーの社会的地位についてなどフィールドワークをしていました。
手塚さんはスペイン留学の後、エコビレッジやベンチャー企業などでインターンシップをしつつ、音楽活動を通じた新しい生き方を模索・発信。
たまたま友達に誘われた東京のアイヌ居酒屋でカルチャーショックを受けます。約半年後、知人を通じて白老町でポロトの森の森林ガイド担当の協力隊募集があることを知り、すぐさま応募したそうです。
まちの人たちから伝統などを学びプログラム化。「森は天然の冷蔵庫」と、狩猟採取民族の文化を今に伝えることを通じて、この地に生きる人たちとの交流機会を提供しています。