札幌で馬を中心とした暮らしの型を実践している「ピリカの丘牧場」で、ファシリテーターをしている、渡辺真帆さんにお会いしてお話しを聞いてきました!
1993年、イギリスで生まれた渡辺さん。一度日本に戻るものの、小学生から再びイギリスへ。小学校2年生の時に乗馬クラブに入ったのが馬との出会いでした。「イギリスでは乗馬はピアノを習う感覚なんです」。

乗馬が楽しくなってきた時、「馬と話す男」の著者、モンティ・ロバーツ氏のデモンストレーションを見て衝撃を受け、将来は馬に携わる仕事をしたいと思い始めたそうです。モンティ・ロバーツ氏は、ホースウィスパラー と世界中の人から呼ばれていて、従来の馬業界の多くは、鞭などの調教器具を使って恐怖によって馬の意思を殺して調教する方法が主流の時代、馬の群れを観察する中で、暴力を使わずにボディーランゲージを使って馬と信頼関係を導く方法(ジョインアップ)を編み出した方です。「馬と信頼関係を築いてコミュニケーションがとれるようになると、どんどん馬が好きになってきました」。
犬は人を個体認識して主従関係が成立しているが、馬と人は違うそうです。「限りなく個体認識に近いのですが“こういう動きをする物体”として認識してて、馬は同じ人でもその人のその時々の状態や感情の変化で人への認識は変わってしまうんです。今の自分自身の状態を馬が教えてくれるんです」。
どんどん馬が好きになった渡辺さんですが、小学校6年生の時に再度日本へ戻ります。「子供心に逆カルチャーショックといいますか、イギリス人になってしまっていたのか、皆から帰国子女だと言われ続けて、日本人が理解できなくなってしまいました。。。」。見かねた両親が、日本に帰ってからも乗馬をさせてくれたのが、渡辺さんの心を救いました。「今思うと、馬は人を差別しないし、人の国籍や人のバックグランドなど関係なく、ちゃんと接すればちゃんとコミュニケーションがとれるんです」。馬とのコミュニケーション、馬の癒し・セラピー力が渡辺さんを立ち直らせてくれたそうです。ただ、イギリスで馬とのコミュニケーションの大切さを学んだ渡辺さんは、日本の馬をオペレートするスタイルの乗馬にはとまどったそうです。。。
競技にも出始めていた渡辺さんですが、中三の時に家庭の事情で乗馬を断念。。。目標を見失い、とにかく英語を極めようと猛勉強。「馬がなくなり自分の取り柄が無くなるのが怖かったんです」。その結果、高校時代に何回もTOEICで満点を採ったり、エッセーコンテスト、スピーチコンテスト、英語ディベートのサークルを立ち上げたり、英語どっぷりの高校生活でした。
「英語で世界の人とコミュニケーションを取ることは、馬とのコミュニケーションの取り方と似ていると思いました」。先入観とか個人の価値観を取っ払って、異文化コミュニケーションに必要なのは「相手の話を聞いて理解しようとする」ことで、渡辺さんが馬から学んだことでした。
アルバイトで子供に英語を教えていた渡辺さんは、日本の英語教育の問題を感じるようになり、上智大学の英語学科に進学。授業で面白かったのは批判応用言語学。「簡単に言えば応用言語学は英語の教え方、今の英語教育の手法でしょうか。批判応用言語学は“Aを教えてもBにならない”その背景には社会的な問題、文化的な背景、その国の施策によって違いが出ます。帰国子女のアイデンティティの問題、移民の問題など、表面的なことを見るだけではく、その背景を理解する必要があることを学びました」。
海外インターンシップ事業を運営する学生団体にも参加して活動を通じてリーダーシップを学び、渡辺さん自身もインドネシアで1年間インターンシップに行きました。「お互いの国で働けば相互理解が進んで国と国との争いごともなくなると思います。とても学びが多く充実した学生活動でした」。

学生時代、授業や異文化コミュニケーションを通じて、日本の教育改革に興味を持った渡辺さんは「私は大学まで教育を受けてきましたが、それ以外の教育は知らないんです。もっと世界の教育現場を知らなければ教育は変えられない」と思い、卒業後は70年代に『社会起業』の定義を生み、社会を変革する個人を発掘し輩出する仕組みから成るグローバル組織に入社しました。
教育現場をどうすれば、社会を変えられる人材を育成できるかを徹底的に調査する日々。世の中の先進的な取り組みに触れて、チャレンジしている人との出会は、渡辺さんを大きく刺激しました。
充実した活動でしたが、休みを取ってモンゴル旅行に行ったとき一大転機が訪れます。

モンゴルでは久しぶりの馬との旅、一日中馬で旅をします。半野生馬のようなモンゴルの馬とは最初全然コミュニケーションが取れませんでした。。。

でもどんどんコミュニケーションがとれるようになった時「私の人生で大切なことは全て馬から学んで来たのでは?」と気付きました。大学の授業も学生時代に参加していたインターンシップ事業も、就職した団体でも、教育も異文化交流も、人と人とは文化やパックグラウンドの違いを理解する力がなければ、コミュニケーションがとれない。いつまでたっても分かり合えずに変わることができない。「これって私は馬から学んで来た事では?」。
実際にやってみたい!フィールドで活動してみたい!と思った時に見つけてのが「ピリカの丘牧場」を運営している株式会社COASでした。しかもCOASのアドバイザーが尊敬するホース・ウィスパラー、モンティ・ロバーツのお弟子さんだったのです!運命を感じた渡辺さんは即入社を決意!
「子供の頃、馬から教わって馬に救われたこと、学生時代に学んだこと、社会に出て思ったこと、これを解決できるのは馬なのではないか?今までの人生が一つに繋がりました」。
そして、2018年6月に北海道のピリカの丘の牧場へ配属!ピリカの丘牧場は一般的な乗馬体験から、馬との暮らしから学べるプログラムが充実している。

「馬と暮らす体験では、馬とのコミュニケーションの取り方を通じて自己認識・自己理解ができて、自分にとって大切なことが気付くことが出来ます。ここでは馬が先生なんです!」。大企業の経営幹部研修にも取り入れられているプログラムですが、子供も自分より大きい動物と信頼関係を築き、コミュニケーションが取れると自信になります。
「お馬さんはカワイイですし、乗馬も楽しいですが、時間があれば、馬との暮らし体験も経験して欲しいです。是非、馬先生に会いに来てください!」。人生で大切なことは馬先生から教わったという渡辺さんと馬先生に会いに来てみませんか?