(一社)黒松内町観光協会ブナ北限の里ツーリズム 事務局長 本間崇文さん
―現在の体験プログラムはどのようなものがありますか?
本間 以前はメニュー数もたくさんやっていたのですが、3年くらい前から絞り込みました。現在、主なものは4つです。ブナ林のガイドウォーク、釣り体験、サイクリング、農業体験、です。最近の人気は釣りですね。日本人はもちろん外国人も参加します。満足度が高いプログラムになっています。
―どのあたりが魅力ですか?
本間 朱太川(しゅぶとがわ)がいいのです。この川の源流は太平洋に近いところにあり、43.5キロかけて日本海に注ぎます。ここは黒松内低地帯と呼ばれるところ。標高の高い山の中に行かなくても、上流部の渓流にすっとアクセスできるところがいいところなのです。
支流もたくさんあります。あちこちのポイントに入りやすい、アクセスしやすいということも人気ですね。苔むした岩とかあって渓流の雰囲気は抜群にいい感じなのです。
釣れる魚はヤマメが中心。大きさは15センチ前後が多いでしょうか。基本は釣って、リリースして楽しみます。札幌近郊から参加する人は持ち帰りもします。別途料金で、河原で炭火焼きにして味わうということもやっています。
―そのほかのプログラムは?
本間 サイクリングは町内に整備されたフットパスコースを利用します。短い距離で周遊できる里山サイクリング。ポタリングというぶらぶらしながら町歩きを自転車に乗って楽しむというものです。使用する自転車はクロスバイクを使います。走行距離は20㎞くらいです。
途中、農家さんに寄ったり、カフェに寄ったり。時期が合えば、アスパラやブロッコリーといった収穫もします。リクエストに応じて、街で買い物もします。事前予約が必要ですが、ミシュラン掲載店でランチを楽しんだりします。農業体験は収穫体験が中心です。季節ごとに収穫できる野菜類をアレンジしています。
ブナ林ウォークは定番になりました。黒松内町は国内のブナの北限地帯。いくつかある森の中へ案内しています。
―生い立ちをおしえてください?
本間 生まれは小樽市です。幼少期から思春期を宮崎県で過ごし、山口県の大学で経済学部を卒業。学生時代、ピカソの作品を観て魅せられました。本格的に芸術を学ぼうとイギリスの大学に入学して学びました。
卒業後は、リバプールで作家活動をしていました。イギリスには10年間いました。美術とメディアコーディネーターとしてロケ地の紹介などもしていました。ロンドンでは旅行会社でも働き、添乗員もやりました。
当時は、日本人富裕層のイギリス旅行の対応・コーディネートをしていました。今は逆、黒松内にいて海外の富裕層の対応をしています。場所は違いますが、やっていることはさほど変わらないような気がしています(笑)。英語力もイギリス時代に培ったものです。
―その後は?
本間 43歳の時、帰国しました。一時、札幌に住んでいましたが、サロベツ湿原でフットパス整備などのスタッフを募集していることを知り豊富町へ移住しました。
豊富時代では、自然の保全活動に勤しんでいました。3年間、自然ガイドの修行時代だったと思います。湿原の植生調査でカヌーに乗って。カヌーも1日15キロくらい漕いで、川を遡上しながら調査やゴミを拾ったりしていました。
―移住して何年ですか?
本間 ここ黒松内町に来て2019年で8年目になります。最初、グリーンツーリズム(GT)を振興させるコーディネーターとして移住してきました。GTだけでは部分的な活動にしかならない。そこで、町全体のプロモーションが必要だと考え、当時、観光協会がさほど活発に動いていなかったこともあり、一体化することを提案。2年前、社団法人化になりました。
人材の発掘とか、観光資源の開発とかが主な役目です。わたし自らもガイドをやります。美術をやっていたことで、クリエイティブなことは好きす。その延長線上の観光コンテンツをプロデュースすることも楽しいですね。
―今後の抱負をおしえてください
本間 最終的なゴールは黒松内町に滞在してもらうこと。このまちに移住者を増やすことかと思っています。そのためには、まちの暮らしぶりを見る体験を通じて、1週間、1ヶ月となるような滞在を長期化するしかけが必要かと考えています。お試し移住住宅のほかに、空き家を使ってAirbnbなどで貸すなどする構想をしています。
かつて、イギリスでよく見かけましたが、あちらでは一軒家を改修して貸し出すガイドブックがあるのです。たいがいは1週間単位で料金が設定されています。英国では、こういった物件をマネジメントする会社もあります。プロパティマネジメントをしている会社です。
黒松内町観光協会も、地域のDMO(ディスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション)としてどこまで貢献できるかわかりませんが、こういったことができる組織にしていきたいと思い描いています。
本文敬称略